2007年5月30日 (水)

「炎のバッツィー」 加藤幸子 (新潮2007年6月号)

あのバッツィーが帰ってきた!
2006年11月号の群像に突如現れた、謎の生物バッツィー。
その奇怪な言動と傍若無人の行動は読んだ者を恐怖のどん底に落とし込んだ。
そして、バッツィーが深い雪山に捨てられた時、ホラー映画の結末のようなカタルシスを覚えた。
しかし・・・
ホラー映画のお約束の如く、バッツィーは再び戻ってきたのだった。
死んだと思って、ほっとしたところを急襲するのは、まさにお約束で、こうなるとかえって清々しいほどだ。

バッツィーとの暮らしがまた始まる。何事も無かったように。
小姑のような嫌みなバッツィーのコトバが主人公に突き刺さる。
忘却虫に脳を冒されているせいか、台所で火を使っても忘れて放置する。
しかも、なぜか火が好きなため、火事の危険が常にある。
こんなバッツィーとずっと暮らしていかなければならないのだ。

主人公の目下の願いは、自分もバッツィーと同化することである。
バッツィーを憎みながらも、どこかで自分とバッツィーの共通性を見抜いている。
人は誰でも老いると、バッツィーになっていくのだ。

しかしこのバッツィー、キャラクターとして相当魅力的だ。
全身鱗。頭の毛が薄い。ほうじ茶が好き。独特の異臭がする。耳が遠い。火を使うのが好き。
怪獣のようないびき。とにかく構われるのが好き。
視覚化する猛者はどこかにいないか。
(新潮2007年6月号)

家のロマンス家のロマンス
加藤 幸子


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