2006年3月25日 (土)

「羽田発小樽着、苦の内の自由」笙野頼子(すばる2006年4月号)

 群像に発表された前作「だいにっほん、おんたこめいわく史」は作者のシャーマン的筆致がフルに発揮されたものだったが、今回は、再び、現実の世に還ってきた。しかしその内容は死をはじめとする別の世界との往還に満ちている。例によって、「おんたこ」に対する創作合評をくさしたり、文学賞選考人事に対する異議申し立てなど、現実的な生々しい世事に触れたりしているが、その後、すぐまた死というものと向き合って、自由自在の心の飛翔を試みている。

 ある意味、これは前作、前々作、そのまた前々々作から繋がっているということも言えて、実際彼女は終わりのない作品をずっと書き続けているのかもしれない。それはさまざまな神の声に対する実に誠実な態度なのだ。

(すばる2006年4月号)

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