2005年11月 8日 (火)

「バス通りの夏」松野大介 (文學界2005年10月号)

 ボクシングに挫折し、雑多な職を経て、とある地方都市のスポーツジムでボクシングの講師になった男。30にも手が届くという年齢らしいが、どこか芯が無い。自分でもそれを自覚して苛ついているのか、常に拗ねたような気分を抱え、斜に構えた態度を取る。職場にいる遙か年上の女性(51歳)に恋をするのだが、そのアプローチの仕方も、ちょっとぎこちなく、ややもするとストーカーと変わらない。どうも他人とも自分とも折り合いのつかない性格のようだ。

 物語の随所に顔を出す、若さ故の焦燥感(この主人公はそれほど若くもないのだが)には同情する部分もあるが、やはり甘ったれているのには変わりなく、もう少しちゃんとしたらと言うしかない。しかしダメな主人公にはダメなりの興味がわいてくる。房総・鴨川の先の地方都市のわびしさと相まって、彼という存在のせつなさが伝わってくるようだ。
 作者はどうやらこの物語の舞台となった地域でカンヅメになって作品を書くことがあるらしく、房総のあたりは土地勘があるのだろう。街の描き方に奇妙なリアリティがあるのが印象的だ。
(文學界2005年10月号)

天国からマグノリアの花を
4062130297松野 大介

講談社 2005-09-10
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