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2006年3月29日 (水)

「腹中花」桑井朋子(文學界2006年4月号)

 待ち合わせの駅に佇む女。相手の男は時間になってもやって来ない。心配になり男の家に電話をかけようとする。その時突然背後から声がかかる。「倉本さん、深夜に電話を使うとみんなに迷惑ですよ。病室に戻りなさい」白い服を着た女、それは看護婦だった。

 待ち合わせは女の妄想、女は胃がんの手術の後遺症でぼけが出ていたのだ。やるなバアさん。まんまと冒頭で騙された。作者は昨年七十を越えた新人と話題を呼んだ女性である。やはりただ者ではない。てっきり老年のドロドロした不倫劇が展開するかと思いきや、前作同様のしたたかで飄々とした老人達が逞しく動き回っている。

 大病を患って入院した時に同じ病室だった三人の老婆。三者三様の境遇がそれぞれに語られる。どこにでもいそうな関西の老婆達。しかしそれぞれの心の奥には誰にも知られない深い闇がある。その闇は腹の中の花=腫瘍となって顕在化したのだろうか。そんな奇妙な想像も浮かんでくる物語である。

(文學界2006年4月号)

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