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2006年3月24日 (金)

「王さま消えたその後で」中山智幸(文學界2006年4月号)

 文學界新人賞受賞第一作。ある日、朝起きると指に赤い糸が巻き付いていることに気付く主人公の新藤(女性)。不思議なことにそれは毎日続くが、全く心当たりがない。友人のサハラくんは、自分で寝ている間に付けてのではないかと推理する。気になる彼女は、死んだ祖母の家に行くことでその原因を知ることになる。

 ややミステリータッチであり、トワイライトゾーンのような超常的な世界に最後は読者をいざなう異色作。受賞作からはおよそ想像の出来ない別の方向に一歩踏み出している。

 サハラくんとの微妙な関係を様々なシチュエーションを与えて描こうとしているようだが、結局サハラくんがあまりよくわからない者のまま終わっている感がある。超常的なイメージを生かすためには、サハラくんのような常識的なこっち側の人間こそきちんと書く必要があると思う。
 こういう作品を見ると、改めて絲山秋子の描いた「沖で待つ」に登場する太っちゃんなどは超常的であるのに極めて常識的でもあるという、よくできたキャラだなと思ってしまう。まあ方向性が違うから比べても仕方ないのだが。

(文學界2006年4月号)

沖で待つ
沖で待つ絲山 秋子


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