« 「羽田発小樽着、苦の内の自由」笙野頼子(すばる2006年4月号) | トップページ | 「シャルル・ド・ゴールの雨女」寺坂小迪 (文學界2006年4月号) »

2006年3月26日 (日)

「森のお菓子屋」小野正嗣 (文學界2006年3月号)

 童話的世界と現実の日常がシームレスに語られる時、読者はそれぞれの世界に隠されたルールに気付く。
 今日があって明日がある日常。ショッピングセンターから送られてくるチラシには有効期限がある。
 しかし童話的世界では時間の概念は曖昧だ。お菓子屋で売られているケーキには賞味期限など存在しない。
 直線的で不可逆の時間ではなく、ただループ運動を繰り返すだけの永遠があるだけだ。だから白雪姫は年をとらないしお菓子の家は腐らない。
 
 しかしそれぞれの世界が地続きになると奇妙な化学反応を起こすらしい。
 お菓子には蝿がたかるし、お菓子の品質についてクレームをつける客まで登場する。まるで近所のスーパーで不良品を見つけたように。

 作者が繰り返しこうした童話と日常の融合をモチーフにした作品を書くのか理由はわからない。
 はっきり言ってあまり気持ちの良い作品ではないし万人にウケるものでもないと思う。
 しかし少なくともこうした奇妙な物語からのメッセージを時々受け取ることで、我々は知らないうちに自分が属する世界を相対化できる眼を養えるのだ。
(文學界2006年3月号)

昔話の深層―ユング心理学とグリム童話
昔話の深層―ユング心理学とグリム童話河合 隼雄

おすすめ平均
stars無意識と意識の架け橋
stars怖い本
stars甘くみていました。
starsユングにおける元型

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

|

« 「羽田発小樽着、苦の内の自由」笙野頼子(すばる2006年4月号) | トップページ | 「シャルル・ド・ゴールの雨女」寺坂小迪 (文學界2006年4月号) »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/45668/9260983

この記事へのトラックバック一覧です: 「森のお菓子屋」小野正嗣 (文學界2006年3月号):

« 「羽田発小樽着、苦の内の自由」笙野頼子(すばる2006年4月号) | トップページ | 「シャルル・ド・ゴールの雨女」寺坂小迪 (文學界2006年4月号) »