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2005年11月17日 (木)

「銀色の翼」佐川光晴 (文學界2005年11月号)

 頭痛に悩む夫婦の話。頭痛といっても生半可なものではない。いわゆる「銀色の翼」という幻の風景が網膜の奥に浮かんでくるような痛さである。
幸い、私はそういった幻を見たことはないが、「銀色の翼」というネーミングからは実に痛そうな感じが伝わってくる。
 作者は一貫して家族を軸にして物語をこれまでも作ってきたが、今回のストーリーは過去のものより切実さのレベルが一段高い。
 主人公より妻の病状のほうが重く、頭痛以外にも精神的にも病んでいく過程は読むのが辛くなるほどだ。
 自分の身内がこのような状態に陥ったらと思うと怖ろしいが、主人公は献身的に妻に接する。しかし主人公もまた病人であるわけで、妻の言動は時に彼を深くえぐる。

 彼と妻を繋ぐアイテムに「石」が登場するのだが、これがなかなか厄介な代物で、二人の縁結びであり、亀裂を生み出すものでもあり、そして再生をもたらすものでもあるのだ。現代の世の中では、とかく「癒し」という言葉がもてはやされるが、本当の「癒し」に至るには、苦痛を伴った再生が必要である。クライマックスで彼らが石を巡って行動するシーンは、まさにそうした本当の「癒し」へのプロセスを描いているようだ。
(文學界2005年11月号)

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