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2005年11月24日 (木)

「踊るナマズ」高瀬ちひろ (すばる2005年11月号)

 第29回すばる文学賞受賞作。九州に伝わるナマズ伝説を絡めながら、自分の夫との思い出を語る。
 東京新聞のコラムにも取り上げられていたが、選考委員の評価があまり芳しくない。「現代文学流行り物見本市」「マンガ定型風の安易なラブストーリー」「豪華おせちのパンフレットみたい」(笙野頼子)、「コンビニ小説」(辻仁成)あたりが一番手厳しく、他の評者も筆力は認めているが、受けそうな素材を並べたようなところが、いささか食い足りないようだ。

 評者の指摘で印象的だったのは、川上弘美の「親切」という言葉だ。要するに、この小説は「親切過ぎる」のだ。新人賞応募作ということで、どうしても作者は「ウケる」話を書こうとする。こういう素材でこんな話を読みたいんでしょ?と作者があまりにも意識し過ぎているのが、逆に白けてしまうのだ。この作者は器用な分、その親切心が前に出てきていて損をしている。

 このへんは昨年の受賞者、中島たい子も同様であり、どうしても読後感に軽さがついて回る。いまどきのOLのいまどきの悩みも結構だが、やはり純文学を名乗る以上は、そこに背を向けても語るべき何かを見つけてほしいものである。ウケる定型話が書きたいのならば「小説○○」といった大衆小説誌でデビューしたほうがいい。

 肝心の話の内容だが、なによりナマズ伝説を単なる性教育の道具に収斂してしまっているところがいただけない。単なる性教育だけの目的で、人々が何百年も語り継ぐわけがないではないか。伝説というものは意味が幾重にも巧妙に隠されているから魅力があるのであって、そんな記号的に解読できるほど簡単なものではないのだ。ある意味この小説はナマズ伝説が本来保持していた得体の知れない魅力を剥ぎ取り、無力化してしまったとも言える。全く罪なことだ。現代人の視点のみからクリアカットに伝説を解いても良いことはひとつもない。
(すばる2005年11月号)

ただのナマズと思うなよ
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