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2005年10月24日 (月)

「vanity」清水博子 (新潮2005年10月号)

 32歳の画子(かくこ)は、強盗に入られた挙げ句、隣人の失火でペットの小鳥を喪う。気持ちを立て直すために、アメリカ留学中の恋人の実家に身を寄せる。恋人の実家は神戸のハイソな家で、そこには絵に描いたような上流階級の暮らしをする恋人の母がいた。その母との生活を通して、画子は異文化である関西の生活スタイルを知る。
 
 vanityとは、虚飾、虚栄、無駄なものといった意味であるが、この作品において、それを指すと思われるものはいくつかある。関西のハイソなマダムの暮らしぶりなのかもしれないし、画子の行動や思いが空虚であると考えてもいいかもしれない。しかし残念ながら、いかにもvanityだと思えるほど、極端なことが書かれているわけではない。それは、今という時代がバブルの頃と違って、何もかもがこじんまりとしたスケールになってしまっているからだろうか。あまりそのvanityぶりにインパクトが無いというのが正直な感想だ。
 きちんと現代のvanityを表現したいのならば、芦屋とか山の手という言葉からだけのイメージに頼らず、もう少し実際にハイソな人々を取材する必要があったのではなかろうか。どうも頭で考えたような紋切り型の小金持ちの姿しか伝わってこない。少しでも取材すれば、きっと現代的スタイルを有したユニークな関西ハイソの実態が浮かび上がったであろうことを想像すると、なんとももったいない作品である。

 自分は何ものでもないくせに、他人への批判精神は旺盛な画子という人格は、読んでいて決して好意的には受け入れられないのだが、ある世代の陥りやすい典型を描いているようでもある。何かしなければという焦燥と苛立ちが強いということだけはよくわかる。
 しかし、早稲田出身の女性だからこうだという妄想に近い自意識過剰ぶりは、どうにかならないものか。今どき大学のカラーなどというものがはっきりあると信じているのは、朝のニュース番組で信憑性の裏打ちも無いまま臆面もなく流している星座や血液型占いを鵜呑みにして「私って、双子座でB型だからこうなのよね」と思いこむと同じくらいナンセンスなことだと思うがどうだろうか。
(新潮2005年10月号)

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