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2005年10月29日 (土)

「ガシャポン ガールズ篇」宮崎誉子 (群像2005年10月号)

 主人公のあたしは小学6年生。担任に嫌われている。しかし、前の担任だった山口先生にはプライベートでもつきあう仲だ。クラスメートの白石さんは、うざい存在だが、友達のようなふりをしている。あたしはたぶん生意気で醒めているけれど、溢れるほどのせつなさを抱えている。でもそのせつなさを誰かに甘えることで減らしたりはしない。

 宮崎誉子は静かに進化している。今回の作品でもその進化ぶりは目を見張るばかりだ。
 作家は何かに後押しされながら物語を吐き出すものだが、彼女にとってそれは何だろうか。
 わずかなエッセイなどを読む限り、それほど多くのものを書きたいわけではないようだが、この進化ぶりを目の当たりにしたのでは、嫌でも書いてもらわねばなるまい。中原某が断筆に近い状況である今、彼女に託されたものは少なくない。
 10年後にはたぶんレトロになっているだろうが、ある時代に生きた少年少女の鼓動音が確かに伝わってくる作品だ。今では安易に甘酸っぱいレトロさを醸し出す目的でCMソングなどに使われてしまうことも多いフリッパーズ・ギターのようにも思える。

 ガーリッシュなどと形容されることも多い作者だが、今回も切れ味確かな「少女」を創り出した。いそうでいない、ひょっとすると、どこかに実際にいるのかもと思わせるような10代。現実と虚構の狭間に生息する、今の時代にしか呼吸できないような若い生き物に生命を吹き込めるのは、今の文学では彼女しか見当たらない。
(群像2005年10月号)

日々の泡
4309017320宮崎 誉子

河出書房新社 2005-09
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