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2005年9月 9日 (金)

「神隠し」中原文夫 (すばる2005年9月号)

 父が失踪したのは玲子が高校2年の時だった。原因は不明。神隠しという言葉が連想されるような不意の蒸発だった。玲子はそれ以来、神隠しという言葉に敏感になる。インターネットで偶然見つけた神隠しの森に興味を持ち、それを知る女性にコンタクトを取る。その地に訪れた玲子は女性の不在を知り落胆するが、そこで出会った役場の男に代わりに森へと案内される。
 
 ごく短い作品であるが、奇譚の雰囲気を充分に持っている。森を案内する男が果たして誰だったのかということを読後に考え続けていくと、何か触れてはいけない領域に踏み込むような空恐ろしい感覚に襲われる。しかしそれは恐怖だからこそ力強い浄化の作用も示しているようだ。

 父の失踪が俗に言う神隠しであったかどうかはわからないが、玲子は案内する男の口から語られる様々な神隠しを通して、今まで正視しようとしてこなかった父の本心と対峙する。そして玲子はその時、ようやく父の呪縛から解放されることができたのだ。
(すばる2005年9月号)

不幸の探究
4861820324中原 文夫

作品社 2005-04
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